出展者ご紹介:北と南とヒロイヨミ

紀行文や詩や俳句、インタビューや写真など、ジャンルも空間も超えて何かを語りかけてくるような雑誌『北と南』。活版、手製本によるアンソロジーなどを制作しているヒロイヨミ社。このふたつが一緒に参加してくださるようになって、もう3年目。去年も一昨年も、このブックフェスタに合わせて『ほんほん蒸気』という冊子を新作で作って持ってきてくださいました。執筆者の選び方も素晴らしく、静かな心で文章に向き合う時間を与えてくれる美しい冊子です。期待通り、今年も新作を持ってきてくださるとのこと。楽しみです。

北と南とヒロイヨミは、今年も、かまくらブックフェスタに合わせて『ほんほん蒸気』の最新号を作りました。
3号目のテーマは、「うた」です。執筆者のみなさんに、3つの作品を選んでいただき、それについてのエッセイをお願いしました。
執筆者は、川野太郎さん、斎藤真理子さん、藤本徹さん、惣田紗希さん、高橋創一さん、松永良平さん、牛島俊雄さん、扇谷一穂さん、扉野良人さん、文庫善哉さん、正一さん、エマーソン北村さん、ナマエミョウジさん(漫画)、河内卓、山元伸子です。装画は大平高之さん。

「うた」のとらえ方は人ぞれぞれで、内容は、多岐にわたっています。歌と言葉、声と文学、音楽と本、などに興味がある方に、ぜひ読んでいただきたいです。今号も、心はずむ言葉や知らなかった作品がたくさん紹介されていて、ますます読書がおもしろくなると思います。

ヒロイヨミ社は、活版印刷で刷った栞なども用意しています。詩がすきな方や、紙や印刷に惹かれる方に触れていただけたらうれしいです。

『北と南』は、バックナンバーと最新刊『だれかの映画史』を販売します。

出展者ご紹介:群像社

3年前、群像社がブックフェスタに初めて参加くださったとき、「じつは群像社のファンなのです」「若いころから、群像社にはお世話になってるんです」と、群像社目当てでブックフェスタを訪れて来てくださったかたが何人か現れました。また、そのときちょうど、アレクシエーヴィッチがノーベル文学賞を受賞し、群像社の名前がにわかにクローズアップという出来事もあり、創立は1980年というこの出版社が積み重ねてきたものの大きさを改めて実感させられたのでした。
いま、たったひとりでこの群像社を切り盛りするのは、島田進矢さん。島田さんのメッセージをご紹介します。

チラシで弱気な予告をした榎本武揚をめぐる初の歴史外交小説は、案の定、刊行が間に合わないことがこの段階ではっきりしました。今回の最新刊はロシアの詩人を代表するアフマートヴァの小社2冊目の詩集『レクイエム』になります。
昨年重版(!)した1冊目の『アフマートヴァ詩集〜白い群れ・主の年』も並べます。

榎本武揚の本が間に合うかも、と書いておられたブックフェスタのチラシによると、ひとりで全4巻のロシア語辞書を編んだというダーリの評伝『言葉に命を』や写真集『サハリン逍遥』などの新刊も持ってきてくださるとのこと。
ロシアもロシア文学も、奥が深すぎてなかなか近づけないようにも思えますが、島田さんはきっと、初心者にも気さくにいろんなことを教えてくださるはず。ブックフェスタが、きっかけの場になれば嬉しいです。

出展者ご紹介:ecrit(エクリ)

第2回から参加いただいているエクリ。昨年のブックフェスタには、新刊として『ロベール・クートラス作品集 ある画家の仕事』という上下巻合わせて600ページ、重量3.8キロという、何とも美しく豪華な本を持ってきてくださいました。
2009年に銀座のギャラリーで当時ほとんど無名だったクートラスの作品に出合い、翌年に作品集『僕の夜』を出版、その後2冊の作品集を経て、この大きなプロジェクトへという展開は、本を出版することの意味を改めて教えられる思いでした。
また、昨年にはもうひとつ、柳田国男のごく短い文章と宇野亜喜良の挿画1点から成る『栃の木と』という、クートラスの作品集とは対極のかたちの本も持ってきてくださいました。
エクリ主宰の須山さんは、声高に書物論を語ることはなさいませんが、この2冊から、須山さんが考える本の姿、出版の意味が、伝わってくるようでした。
そして今年の新作は『山の家 クヌルプ』。これまでのエクリの本とはちょっと違うような、でもやっぱりエクリの本と言えるような、魅力的な1冊です。須山さんにメッセージをいただいたのでご紹介します。

エクリのいま

エクリの2017年の新刊『山の家 クヌルプ』は、インタビューをもとに、エクリ・スタッフ(二人)が執筆したものです。装丁はこれまで同様、次男の悠里が担当しましたので、文字通りの「家内工業」。
ヘルマン・ヘッセの小説『クヌルプ』を山小屋の名とした霧ヶ峰高原のクヌルプ・ヒュッテは今年、創業60年を迎えています。戦時を際どく生き延びてきた山小屋主人夫婦や小屋に集った人々の多彩な語りと、エクリの家族が通った30年を編みこんだルポルタージュです。
山小屋主人、松浦氏の旧制松本高校の同窓で、エリアーデの小説の翻訳者でもある住谷春也氏が「松浦とクヌルプをこれ以上なく美しく、そして過不足なく表現した本」と評してくださっています。

長田弘さんと日本画家の日高理恵子さんによる詩画集『空と樹と』(今年、ようやく増刷)がきっかけとなって、私たちは「木林文庫」という木にまつわる書籍だけを集めた図書コーナーを事務所内につくっています。絵本、文芸書、コミック等、約1,300冊を予約で閲覧いただけます。

出展者ご紹介:牛若丸

牛若丸は、ブックデザイナー・松田行正さんが主宰する出版社。「本は明るいおもちゃ」とおっしゃるその言葉通り、手にとると気持ちがはずむような本ばかりを出していらっしゃいます。1冊ごとに、さまざまな仕掛けをこらした本は、印刷や用紙や製本、さまざまなテクニックに精通しておられるからこそ実現可能なものばかり。松田さんは、今年はご自身の著作として『デザインってなんだろ?』『RED ヒトラーのデザイン』も出されています。
牛若丸は、かまくらブックフェスタには第3回から参加してくださっていますが、今回の新作はビートルズの本です。ぜひ会場で、実物をご覧になってください。

GET BACK… NAKED
1969年、ビートルズが揺れた21日間

 2016年は、ビートルズ解散から46年目。解散のカウントダウンとなった、1969年1月に行われたゲット・バック・セッションの詳細を、ビートルズ道をまい進する藤本国彦さんが語ります。巻末付録として、松田行正による「ビートルズのジャケット・デザインの分析」、杉本聖士+あやこるによるマンガ「女子高生 放課後ロンリー・ハーツ・クラブ」も。
 造本コンセプトは「歪んだホワイト・アルバム」。ビートルズの「ホワイト・アルバム」は、ビートルズ各人のスタンド・プレーでできたアルバムでしたので、グループ崩壊の序章はこのときから。その意味を込めて、「不揃いで歪んだ」本にしたくなりました。あたかも適当に折ったかのようにページがばらばらになっている製本方法を採用。

今秋も鎌倉へ! 第7回かまくらブックフェスタ

おかげさまで7回目を迎える「かまくらブックフェスタ」。今年は10月の7日(土曜)と8日(日曜)です。
今年は、「共和国」「タバブックス」「カディブックス」という3つの出版社が初参加です。カディブックスは、「編集室屋上」との共同出展です。
そして「映画酒場編集室とその仲間たち」として、『映画横町』はじめリトルプレスや新聞たちが共同で参加してくださいます。
また、第3回・第4回で参加してくださっていた「トムズボックス」が、久しぶりに鎌倉へ来てくださいます。惜しまれながらクローズした吉祥寺のお店で販売していた絵本やグッズなどを持ってきてくださるそうです。
毎年このイベントを盛り上げてくださる「牛若丸」「北と南とヒロイヨミ「群像社」「羽鳥書店」「エクリ」の皆さんは、それぞれ新作をご紹介くださる予定。
さらに大阪から「編集工房ノアぽかん編集室」、京都からは扉野良人さんのプライベートプレス「りいぶる・とふん」が、今年も駆けつけてくださいます。
地元鎌倉からは、素敵な古書店「ブックスモブロ」、おいしいコーヒー屋さん「モデラート・ロースティング・コーヒー」、そして港の人です。
会場は、昨年までと同じ、鎌倉駅から徒歩10分の「garden & space くるくる」、美しい庭のある古い建物です。

また、同時開催イベントとして、昨年まで「via wwalnuts社」として参加くださった詩人の平出隆さんに、展示と講演をお願いしました。こちらは8日のみ、会場は、すぐ近くの由比ガ浜公会堂です。
平出さんには、ブックフェスタの第1回目からずっとトークをお願いしてきましたが、対談という形ではない講演は5年ぶりとなります。via wwalnuts叢書のこれまでとこれからについて、そして新たに生まれた「空中出版」について、実践と思考から生まれた書物論に静かに耳を傾けたいと思います。

詳細は、かまくらブックフェスタのホームページへ。
平出隆さん講演の予約やすでに受付開始しておりますので、お早めにどうぞ。

本たちとともに、たくさんの皆様のご来場をお待ちしています。

第6回かまくらブックフェスタ、無事終了しました。

ふだんさまざまなイベントでもご一緒させていただいている版元のみなさん、京都や大阪、さらには、博多から、大切な本や冊子とともに参加くださったみなさんのご協力を得て、ブックフェスタ、今年も無事に終えることができました。
秋の長雨が続くなかでの開催でしたが、例年に負けないほど多くの来場者をお迎えすることができました。お客さまにはご不自由をおかけしましたが、会場となった「garden & spaceくるくる」では、窓の向こうにしっとり雨にぬれた庭の草木が見えて、いかにも本に似つかわしい風景でした。
毎年この会場で会うのが恒例となっている方々、初めて訪れてくださった方々、会場のあちらこちらで楽しげな本談義が続いているのを見ると、今年も開催できたことの喜びがわいてきます。
1日目のトークイベントは、西日本新聞社出版部の末崎光裕さんと忘羊社の藤村興晴さんの対談。出版流通の現場の声、版元の抱える悩みなどを率直に話してくださいました。とは言っても、決して暗く深刻ぶった雰囲気にならないのは、おふたりの持ち味。九州で始まった、新しい出版流通のシステムを作る試みを、ずっと応援していきたいと思います。そして、本は、たんなる商品ではなく、人と人を結びつけ、人の心や社会のあり方も変えていくような可能性を秘めた存在であり、そのことを決して軽んじてはならないと改めて思いました。
2日目は、平出隆さん、郡淳一郎さん、扉野良人さんの鼎談。お三方とも、口調は静かでしたが、ひと言ひと言を、これ以上ないくらい大切に語ってくださいました。冒頭で平出さんは、via wwalnutsを立ち上げたとき、手紙のような本という造本を実現するために費やした時間を「命がけの設計だった」と表現なさっていました。ふだん穏やかな平出さんが口にされたこの言葉の激しさと重さを、改めて思います。書物とは、それほど真剣に向き合うべきものなのだと、ご自身の人生をかけて教えてくださっているように思いました。会場の席に回された、お三方の蔵書を手にとっておられる聴衆の皆さんの、書物を慈しむような横顔も強く印象に残っています。

ご来場いただいた皆さま、ほんとうにありがとうございました。




1日目トークイベント「本屋がなくなったら、困るじゃないか」


2日目トークイベント前、打ち合わせ中の平出隆さんと扉野良人さん

出展社のご紹介:ブックスモブロ、MODERATO ROASTING COFFEE、港の人

明後日にせまった「かまくらブックフェスタ」、地元鎌倉からの参加メンバーをご紹介します。

まずはブックスモブロ。ふだんからお世話になっている、古書店です。先月、5周年を迎えたとのことですが、毎年初夏に鎌倉で催される「ブックカーニバル」を中心になって盛り上げてくださっています。古書のほか、新刊本、各地のミニコミ誌などもていねいにセレクトされていて、心地の良いお店です。
ことしは、デザイン書、写真集、リトルプレスや絵本など幅広いジャンルの古書を持ってきてくださるとのこと。芹沢けい介全集やクロッキー全集などもサンプルを持ってきてくださるそう(購入は全巻揃いのみ、とのことでちょっと勇気がいりますが)。また、今月末から、モブロ店内で開催予定の「蔵書票展」にあわせて、蔵書票の作品集もあるとのことですので、これも楽しみです。

そして、モデラート・ロースティング・コーヒーは、港の人の事務所近くにあって愛用させていただいているコーヒー焙煎店。
会場でコーヒーを淹れ、カレーライスやパンも販売してくださる予定です。ご来場の皆さんには、くつろいでいただきながら、ゆっくり本を選んでいただければと思っています。

そして、港の人は、新刊を皆さんにぜひ見ていただきたいと思っています。空中線書局の間美奈子さんに装幀をしていただいた、鎌倉在住の文芸批評家、新保祐司さんの若き日の著作の復刊『鬼火』、好評いただいている斉藤斎藤さんの『渡辺のわたし 新装版』角川春樹の最新句集、真っ黒なクロス装に芙蓉の花の模様を押した中上健次への挽歌『健次はまだか』、そして、四月と十月文庫の最新刊、ライター遠藤哲夫さん『理解フノー』など、いろんな顔をした本たちですが、どれも大切な港の人の子どもたちです。どうぞよろしくお願いします。