「文学」の街、鎌倉で本のお祭りをおこなう理由




猛暑も少し収まり、気づけば8月も終わりに近づいてきました。今日は、なぜ鎌倉でブックフェスタを行うのか、その理由について少しだけ思うことを書きたいと思います。

古都・鎌倉といえば、昔から「文学」の街として知られてきました。小林秀雄川端康成など、いわゆる「鎌倉文士」と呼ばれる鎌倉にゆかりのある文学者たちは大勢いますし、現在も鎌倉にお住まいの作家たちがたくさんいるようです。「荒地」派詩人の田村隆一北村太郎も鎌倉に住んでいたことがあります。現在でも、鎌倉ゆかりの文学者たちの原稿や愛用品などを収集展示している鎌倉文学館や、鎌倉にゆかりのある作家たちによる文化団体「鎌倉ペンクラブ」などがあります。

また鎌倉には、古くからの書店もたくさんあります。東口駅前にある島森書店や松林堂書店、小町通りにある大里書店、邦栄堂書店。そして、西口にあるたらば書房。古本屋では、小町通りにある木犀堂や藝林荘、古本と骨董を扱う游古洞、四季書林、鎌倉キネマ堂、由比ケ浜通りにある公文堂書店などがあります。どのお店も、地元の人たちに愛される老舗の書店ばかりです。

それから、由比ケ浜を拠点とする私たち港の人の他、月刊タウン誌「かまくら春秋」で昔からよく知られているかまくら春秋社材木座にある冬花社など、鎌倉の出版社も実はいろいろとあります。

このように、鎌倉という街は昔から「文学」や「本」となじみの深いところです。ただ、歴史があるぶん、少し堅苦しいイメージもあるような気がしていて、もっと気軽に「本」を楽しむ場所もあっていいんじゃないかな、と少し前から考えていました。実際、ここ2、3年の間に、これまでの鎌倉とは少し違うイメージの新しいお店が少しずつ誕生しています。由比ケ浜通りの港の人の事務所の近くでは、絵本とうたのブックカフェSong Book Cafeや、絵本と家具のお店syocaが、他にも本のお店ではありませんが、沼田元氣さんがプロデュースしたこけしとマトリューシカのお店、コケーシカが、一昨年吉屋信子記念館のすぐ側にオープンしています。そして9月には鎌倉・大町に古本とzine(リトルプレス)と雑貨のお店、ブックスモブロがオープンする予定とのこと。

東京では、不忍ブックストリートでの一箱古本市を中心とした活動や、西荻ブックマークのさまざまなイベント、わめぞのみちくさ市他、古本を中心とした本のイベント・お祭りが人気を集めています。昨年からは月島であいおい古本祭りも始まりました(第2回は来週末です)。また、出版社が集まって展示販売をするアノニマ・スタジオのブックマーケットは、かまくらブックフェスタを企画するうえでたいへん参考になりました。そして実際にはまだ見に行ったことはありませんが、仙台でのBook! Book! Sendaiも、とても興味深く思っています。これらの活動はどれも、地元に根ざしたものです。これからの本作り、そして本を売ることを考えるうえで、その土地や地域との関係はもっともっと大切になってくるのではないでしょうか。

初めての試みなので不安もありますが、「かまくらブックフェスタ」をきっかけに、鎌倉にあたらしい本文化が盛り上がっていけばいいな、と考えています。「文学」にかぎらず、「本」のさまざまなあり方、楽しみ方を伝えたい。それは古い歴史のある鎌倉だからこそできることだと思うのです。東京という出版の中心部からは離れた鎌倉らしいイベントを目指して、あと1か月がんばって準備をしていくつもりです。