出展者ご紹介:群像社

群像社さんは、ロシア文学に興味のある人ならば誰でもその名を知っている出版社。若い世代でロシア文学ファンというのは、今はかなりの少数派かもしれませんが、それでも本好きの人ならば、ヨシフ・ブロツキーノーベル賞受賞講演『私人』のことはご存知ではないでしょうか。文庫本サイズの小さな本でありながら、風格の漂う一冊。ページをめくれば、レニングラード生まれのユダヤ人であり、壮絶な人生を歩んだ詩人の言葉が、低く鳴る鐘の音のように心に響いてきます。

群像社さんは、島田進矢さんが営むひとり出版社。もともとは、1980年にふたりのロシア語翻訳者によって始められた会社だとのこと。88年に島田さんが入社した当時は4人所帯だったそうです。その後、創業者のひとりである先代の社長とふたりになり、2000年にその社長が亡くなられた後、島田さんが引き継いだそうです。先代社長の私費をつぎ込んで成り立っていた会社を整理しつつ立て直し、ひとり出版社として再出発したのです。
20年続いたひとつの出版社を、たったひとりで引き継ぐ。それは、たくさんの書物を引き継ぐことであり、精神を引き継ぐことであり、また同時に、ビジネスを引き継ぐこと。その大変さは、こちらが想像する以上なのではないかと思います。いろいろな大学から「文学部」という学部がどんどんなくなっていくようなこの時代、文学の灯を守りぬくのは、ますます大変に、そして、ますます大切なことになっていくのかもしれません。
群像社さんの本からは、ある誠実さがはっきりと伝わってきます。今回のブックフェスタのちらしに、島田さんはこのように書いてくださいました。「見知らぬ国で生まれた様々なイメージの世界にふれていると、こちらの想像力も豊かになります。なじみのない国なら、ふくらみもそのぶん大きくなります。そんな思いで本をつくっています」と。
ブックフェスタで、見知らぬ国との新しい出会いが果たせることを、今から楽しみにしたいと思います。

群像社ホームページ  http://www.gunzosha.com



ウクライナから愛をこめて』
チェルノブイリ原発事故の記憶が深く心に刻まれた子供時代をすごし、日本の大学で学んだウクライナ女性が忘れられない人々の思い出と故郷の街の魅力を日本語でつづったエッセイ。


『出身国』
異端の現代作家ドミトリイ・バーキンのデビュー短篇集。


『まんまるパン』
昭和30年代に人気を博した、ロシア民話をもとにした人形絵本。