出展者ご紹介:羽鳥書店

「さりげなく参加」なんて、とんでもない。羽鳥書店の存在は、毎年このブックフェスタを支えてくださってます。
今年は「はとり文庫」の久しぶりの新刊を持ってきてくださるそうです。

毎年さりげなく参加させてもらっています、羽鳥書店です。2009年の創業以来、現在68点を刊行していますが、当社の「はとり文庫」というシリーズをご存知でしょうか? 最初に製作したのは、2011年、高知在住のデザイナー梅原真さんと、グラフィックデザイナー原研哉さんの対談を収録した『梅原デザインはまっすぐだ!』(はとり文庫001)でした。同時期に出した第2弾は、いまや人気の画家・池田学さんと、日本画家・三瀬夏之介さんの、これまた対談本『現代アートの行方』(002)でした。

この文庫シリーズは、いわゆる「文庫」とは違い、書店の文庫棚には並びません。「文庫サイズ」というだけです。基本的に同じフォーマットで表紙の絵柄と色が内容にそくして変化します(デザインは原研哉さん)。コンセプトとしては、羽鳥書店の単行本から付随的に生まれ出た「副読本」と位置づけて、その親本となる単行本と一緒に棚に並べてもらうことを想定しています。

ですので、001の親本には梅原真『ニッポンの風景をつくりなおせ── 一次産業×デザイン=風景』があり、002には、池田学『池田学画集1』と三瀬夏之介『冬の夏』があるのです。いずれも、親本の刊行記念でおこなったトークイベントが元になりました。当社のような小さな版元はPR誌などのメディアを持たないので、それにかわる小さな出版物をつくりたいとの思いでした。

しかし、ひとつかたちを得ると、不思議とそこからいろいろな展開がはじまるものです。第3弾となったのは、学魔・高山宏先生の『夢十夜を十夜で』(003)でした。こちらも『新人文感覚』全2巻(総頁1912)の副読本として誕生したのですが、大部2冊刊行の間に文庫1冊どうでしょうか?という編集者の無茶ぶりに、高山先生が画期的な漱石論となる書下ろし300枚で応えてくださり、本の厚さも一気に倍増しました。

さらに、第4弾となった小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(004)は、副読本ではなく、単独の本として刊行した書籍です。本書は、東日本大震災で甚大な被害にあった宮城県女川町の中学生たちが、震災後まもなく国語の授業でよんだ俳句を、朝日新聞記者の編者が丹念にその背景をききとり、まとめたものです。俳句ということからも、決してボリュームのあるものではないため、「文庫」のサイズがとてもふさわしく感じられました。おかげさまでロングセラーとなっています。

あれからしばらくはとり文庫は出ていなかったのですが、今年の夏に久しぶりに第5弾を刊行しました。工藤庸子さんと蓮實重彦さんの対談集『〈淫靡さ〉について』(005)です。こちらは、親本にあたる工藤庸子編『論集 蓮實重彦』のトークイベント収録という点ではコンセプト通りなのですが、対談は2本立てで、しかも工藤さん渾身の書下ろし「『伯爵夫人』論」70枚に、「はじめに」「おわりに」に代えたお二人の充実した文章が入り、このサイズながら、なんとも贅沢な内容となりました。

今回のブックフェスタでは、これらの文庫本と単行本を親子でご覧いただけるように用意します。また、池田&三瀬、工藤&蓮實の贅沢なサイン本も含め、美術書の各種サイン本もみつくろいますので、どうぞこの機会を逃さずお買い求めください。