出展者ご紹介:牛若丸出版

長年第一線で活躍を続けておられるブック・デザイナー、松田行正さんが主宰する出版社。松田さんが、造本デザインだけでなく、執筆を手がけておられるタイトルもあります。本のテーマとテキスト、目の楽しみや手の喜びが一体となった本を、こんなにたくさん出し続けている出版社は、ほかにはないでしょう。緻密なデザインが生み出す、弾けるような驚き。マニアックだけれどオープン。こんな途方もないプロジェクトを長く持続しておられる体力や発想力には敬服します。
今回「ブックフェスタ」で販売されるタイトルから2点について、誕生秘話をお聞かせ願いました。
まずは、最新刊である、『ヒョウタン美術館』。

この本は、壺(ヒョウタン)のなかに宇宙があるという中国の故事をもとに、本を開くと水(酒)のなかにテキスト(宇宙)が浮かんでいるという発想を形にしようとしました。
当初透かしニスを使用して本文の周りだけを透けさせようとしたのですが、2度刷りしてもよく見れば違うかな?という程度。3度刷ると少しイメージには近づくものの、紙のダメージがひどく2度刷りが限界でした。今年は企画倒れかなあとあきらめていた所、「ワックス+」という技術に出会いました。
片艶クラフト紙の「OKブリザード」を使用し加工した所、これが「ワックス+」と好相性だったようで、仕上がりはバッチリ! 感動的な透け感になりました。一度実物を手に取ってご覧ください。

そして、昨年のブックフェスタでも、ひときわ目立っていた「B」。

タイトルにちなんでBの形に抜いた上製本並製本なら難なく出来る型抜きも、上製本で、しかもこれだけ表紙の芯が厚いと、一度に抜くと圧力で背表紙が割れてしまいます。そこで表紙と本体を別々に型抜きし、後工程で合体する策を取りました。本体を背につけると、合体したときに小口がわずかにズレてしまうので、ホローバックで背を浮かせて“遊び”をもたせることで、きれいに揃って見えるよう工夫をしています。Bの文字は、スタンダードな欧文書体のDINをベースにつくったもの。曲線の角度が浅すぎるとBに見えないし、上と下の膨らみに差がありすぎると本文の収まりが悪い。丁度いい形に決めるのが思いのほか難しく、試行錯誤しました。

どちらも、ブックフェスタで販売していただけます。どうぞ手にとってみてください。

松田オフィス/牛若丸出版  http://matzda.co.jp