トークイベント「装幀をめぐって」

かまくらブックフェスタ2日目のトークイベントは、平出隆さんと加納光於さんの対談です。
加納さんのお仕事は、版画、絵画、オブジェなど多岐にわたりますが、装幀も数多く手がけておられます。瀧口修造さん、大岡信さん、吉増剛造さん、澁澤龍彦さんなど、関わりの深い文学者との書物の作品です。今回は、そんな加納さんのこれまでの装幀のお仕事を1冊1冊拝見しながら、お話を伺うのが中心となります。
平出隆さんは、詩人であり作家であり、そして、デザインの仕事もなさいます。文学と美術、双方について高い眼識をお持ちのふたりが、書物の装幀についてどのようなお考えをお持ちなのか、学ぶことがいっぱいありそうです。


↑1974年の吉増剛造さんの詩集「わが悪魔祓い」の口絵。
見返しが銀箔のような用紙で、口絵作品を映し出しています。


↑同じく「わが悪魔祓い」の函。

函や表紙などに使われている作品は、すでにあるものを使うのではなく、その本の装幀のために制作してきたと、加納さんはおっしゃっておられました。その贅沢さに溜息が出ますが、大切なのは贅沢さ以外のところにあるように思えます。ページの中へと誘うようなこの強い力は、どこから生み出されるのでしょうか。


↑1974年の吉増剛造さんの散文集「朝の手紙」のクロスの表紙には
吉増さんの手型から起こした作品が銀色に箔押しされています。
カバーは、同じ手型を使ったオブジェ作品です。


↑1976年、瀬戸内晴美さんの「冬の樹」。
ちょっと意外な取り合わせですが、なまめかしさがよくマッチしています。

加納さんと平出さんは、詩画集『雷滴 その研究』をともに制作しておられます。〈via wwalnuts叢書〉のシンボルマークの図像も、加納さんの手によるものです。また、平出さんの『猫の客』は小説ですが、加納さんの「稲妻捕り」のことが出てきます。単行本の見返しには加納さんの作品が置かれていて、文庫本では、これが表紙の作品になっています。そんなことからも、おふたりの深い交わりの一端がうかがえるような気がします。


平出隆さん「猫の客」の見返しに置かれた加納さんの作品。
文庫本では、カバーで使われています。

加納さんは50年以上も鎌倉に住まわれていて、会場となる大町会館のすぐそばに住んでおられたこともあるそうです。人前で話すことは得意でないとおっしゃって、今から緊張なさっているご様子ですが、きっと貴重なお話をたくさん聞かせてくださるのではないかと思います。この機会をお見逃しなきよう。