出展者ご紹介:ecrit(エクリ)

第2回から参加いただいているエクリ。昨年のブックフェスタには、新刊として『ロベール・クートラス作品集 ある画家の仕事』という上下巻合わせて600ページ、重量3.8キロという、何とも美しく豪華な本を持ってきてくださいました。
2009年に銀座のギャラリーで当時ほとんど無名だったクートラスの作品に出合い、翌年に作品集『僕の夜』を出版、その後2冊の作品集を経て、この大きなプロジェクトへという展開は、本を出版することの意味を改めて教えられる思いでした。
また、昨年にはもうひとつ、柳田国男のごく短い文章と宇野亜喜良の挿画1点から成る『栃の木と』という、クートラスの作品集とは対極のかたちの本も持ってきてくださいました。
エクリ主宰の須山さんは、声高に書物論を語ることはなさいませんが、この2冊から、須山さんが考える本の姿、出版の意味が、伝わってくるようでした。
そして今年の新作は『山の家 クヌルプ』。これまでのエクリの本とはちょっと違うような、でもやっぱりエクリの本と言えるような、魅力的な1冊です。須山さんにメッセージをいただいたのでご紹介します。

エクリのいま

エクリの2017年の新刊『山の家 クヌルプ』は、インタビューをもとに、エクリ・スタッフ(二人)が執筆したものです。装丁はこれまで同様、次男の悠里が担当しましたので、文字通りの「家内工業」。
ヘルマン・ヘッセの小説『クヌルプ』を山小屋の名とした霧ヶ峰高原のクヌルプ・ヒュッテは今年、創業60年を迎えています。戦時を際どく生き延びてきた山小屋主人夫婦や小屋に集った人々の多彩な語りと、エクリの家族が通った30年を編みこんだルポルタージュです。
山小屋主人、松浦氏の旧制松本高校の同窓で、エリアーデの小説の翻訳者でもある住谷春也氏が「松浦とクヌルプをこれ以上なく美しく、そして過不足なく表現した本」と評してくださっています。

長田弘さんと日本画家の日高理恵子さんによる詩画集『空と樹と』(今年、ようやく増刷)がきっかけとなって、私たちは「木林文庫」という木にまつわる書籍だけを集めた図書コーナーを事務所内につくっています。絵本、文芸書、コミック等、約1,300冊を予約で閲覧いただけます。